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​作品紹介

「密会」は、2004年にウィングフィールドで上演された、くじら企画の第10回公演である。

元々は安部公房の小説「密会」を土台に、深川通り魔殺人事件を題材にした作品であり、くじら企画の前身である犬の事ム所の作品として1993年に上演された。

くじら企画バージョンの密会は、そこから安部公房の要素を殆ど取り去り、舞台装置も演出も削ぎ落とし、犯人である川俣軍司と、「電波」で繋がれた、現実では繋がれなかった他人達が正気と狂気を織り成していく。

今回、この作品を演出するにあたって考えているのは、「削ぎ落とされたもの達」の再構築である。

大竹野正典氏がくじら企画の密会を創り上げていく過程で不必要と判断したもの、切り落としていったパーツに再度焦点を当て、もう一度「密会」の中へ織り込んでいく。

それはただ単に、旧密会や安部公房の小説のシーンを挿入するという事ではなく、主人公と電波で繋がった他人達の外側にいる、求めても手に入らなかった「理想の他人に定義された自分自身」を、音楽や身体表現、衣装やメイクといった形で密会の世界の一番外側に装飾する事により、より核となる部分のテーマが見えてくるのではないか、という実験である。

インターネット、SNS全盛期の現代において、「電波で繋がった頭の中の他人」は作品が創られた当時よりも遥かに人々の中に蔓延し、その挙動に一喜一憂しながら生きている。

孤独も、拒否も、拒絶も、閉塞も、自分だけでは成り立たない。

他人と自分の間に全て存在するものである

主人公の視野の範囲だけではなく、その外側も含めて一つの物語へ再構築(Rebuild)していけたらと考えている。

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